2010年3月20日土曜日

あの人のこと、まだ忘れられないでいる。

あの人のこと、まだ忘れられないでいる。

もうとっくに忘れるべきなのに,それでも何かの拍子に思い出してしまう。

わたしといるときも、もうとっくに時間が過ぎているのに,同じ言葉を何度も何度もくりかえしていた。

ああ,この人、ほんとにブログの私のことが好きだったんだ......。

 嘘ばかり綴っていたのに,ホントのことだと思っていたんだ。

その理想化している私と,現実の私、ギャップが多過ぎてなんだか怖くなった。

 恋している少年の姿を見ると、とても悪いことをしていたような気がした。

言葉の魔法....とりわけあの歌詞が呪文のように効いたようだ。(注:ギロックの「サラバンド」に私がつけた歌詞のこと)http://expulsion909.blog68.fc2.com/blog-entry-471.html

 わたし,それまで自分にそんな力があるとは思ってもみなかった。

 嘘ばかりの日記をもう何十冊となく書いていたから、ブログに偽りの生活を書くのには慣れていた。

あの人、きょうはほんとにわたしがあのブログの主であるかどうか,確かめたくて来たのだった。


「君は......やっぱり,魔女だったんだね」

遠い所を見ながら彼は言った。

「この黒い服のせい?......これから告別式へ行きます」


ずっと前にも黒い服の私を見たはずだ。

ブログにUPした動画で。そこでわたしは黒いドレスでピアノを弾いていた。

ハ短調のソナタ。モーツァルトだけど。


私は突然に亡くなってしまったあのサイトのことも、あの人と出逢った別のサイトももう見ていなかった。前者は見ようと思っても無理だし、あの人が、実際,想像以上に怖い人だとはその頃は知る由もなかった。


結局のところ、わたしがナナさんを演じていたのは,彼がコンサートに来ることを見越してのことだった。同名の奈々さんという女性がいたし,わたしの本名はナナではなかったから。


あの人がもし仮に間違えたとしても,現実にいるナナさんは別のナナさんで、実在しなかったのだから。すべてが仮想の空間での幻なのに、本気で恋などしようなんて.....どうしてそのように思ったのか?

 あの人ほど純粋に,言葉を信じる人がいただろうか?

その混じり気のない瞳は、しっかりと私の目を見つめていた。


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